君の生きる理由になりたかった

 

中学三年生、夏休みも明けて二学期が本格的に始まった頃だった。


「最近、消しゴムとかがすぐどっか行くんだよね。今日もシャーペン失くしちゃった、昨日まであったはずなんだけど……」
 

放課後、帰り道に陽菜が不思議そうにそう告げた。
 
陽菜がなにか失くすなんて珍しいな。のらりくらりと、そんなことを考えながら口を開く。


「私の失くし癖がうつっちゃったんじゃない?」

「えー、不名誉だなあ」

「なっ、そんなこと言わないでよっ」
 

けたけたと、鈴が転がるように陽菜は笑う。それからは、いつも通りなんでもない話をしながら、肩を並べて歩いた。今日は千鶴の家に行って、一緒に宿題をしようとか、なんんてことのない約束を交わしたりして。
 
文房具がどこかに行くなんて、よくあることだと思っていた。そうやって、当時は気にも留めていなかったけれど、このとき気づいてあげられていれば、もしかしたらなにかが変わっていたのかもしれない。