# 第24話 【友人証言】佐倉美緒について
---
## 【聞き取り調査記録】
### 調査日
6月26日
### 調査対象
田辺由香
### 聞き取り担当
クラスメイトB
### 調査目的
共同研究開始後における、
佐倉美緒の行動・会話・心理的変化について、
第三者の視点から確認する。
---
# 【質問1】
### 「佐倉さんは、研究を始める前と比べて変わりましたか?」
---
### 田辺
> 「変わった。」
---
### 質問
> 「具体的には?」
---
### 田辺
> 「よく笑うようになった。」
---
### 質問
> 「それは高橋くんといるとき?」
---
### 田辺
> 「特に。」
---
### 質問
> 「他の人といるときは?」
---
### 田辺
> 「普通。」
---
### 質問
> 「高橋くんといるときは?」
---
### 田辺
> 「ちょっと違う。」
---
### 質問
> 「どう違う?」
---
### 田辺
> 「本人は気づいてないと思うけど。」
---
### 【田辺・回答】
> 「楽しそう。」
---
# 【質問2】
### 「佐倉さんは、高橋くんの話をしますか?」
---
### 田辺
> 「する。」
---
### 質問
> 「どのくらい?」
---
### 田辺
> 「前はほとんどしなかった。」
> 「今は毎日一回はする。」
---
### 質問
> 「どんな内容?」
---
### 田辺
> 「今日、高橋くんが何を言ったとか。」
> 「この前、高橋くんがこういう本を読んでたとか。」
> 「高橋くんがこのパン好きだとか。」
---
### 質問
> 「本人はどう言っていますか?」
---
### 田辺
> 「全部、研究って言う。」
---
### 質問
> 「田辺さんはどう思いますか?」
---
### 田辺
> 「便利な言葉だと思う。」
---
# 【質問3】
### 「佐倉さんは、高橋くんのことをよく見ていますか?」
---
### 田辺
> 「見てる。」
---
### 質問
> 「どんなとき?」
---
### 田辺
> 「教室に入ってきたとき。」
> 「誰かと話してるとき。」
> 「疲れてそうなとき。」
> 「あと、笑ってるとき。」
---
### 質問
> 「なぜ見ていると思いますか?」
---
### 田辺
> 「本人に聞いて。」
---
# 【質問4】
### 「高橋くんが女子と話しているとき、佐倉さんはどうなりますか?」
---
### 田辺
> 「普通。」
---
### 質問
> 「本当に?」
---
### 田辺
> 「普通に見える。」
---
### 質問
> 「でも?」
---
### 田辺
> 「会話が少し静かになる。」
---
### 質問
> 「それは嫉妬では?」
---
### 田辺
> 「私はそういう判断はしない。」
---
### 【注記】
田辺は、
「嫉妬」という言葉を使用することについて、
回答を拒否。
---
# 【質問5】
### 「最近、佐倉さんが一番楽しそうだったのはいつですか?」
---
### 田辺
> 「文化祭。」
---
### 質問
> 「何をしているとき?」
---
### 田辺
> 「高橋くんと一緒に準備してたとき。」
---
### 質問
> 「どんな様子でしたか?」
---
### 田辺
> 「二人で同じ紙を見ながら話してた。」
> 「佐倉が何か言って、高橋くんが笑って。」
> 「それ見て佐倉も笑って。」
> 「ずっと楽しそうだった。」
---
# 【質問6】
### 「佐倉さんは、高橋くんと一緒にいることをどう思っていると思いますか?」
---
### 田辺
> 「好きなんじゃない?」
---
### 質問
> 「恋愛的な意味で?」
---
### 田辺
> 「そこまでは分からない。」
---
### 質問
> 「でも、特別?」
---
### 田辺
> 「それはそうだと思う。」
---
# 【佐倉美緒・反論書面】
本聞き取り調査について、
一部訂正を要求する。
---
### 訂正事項①
> 「毎日一回は高橋くんの話をする」
→
正確には、
研究に関する話をしているだけ。
---
### 訂正事項②
> 「よく見る」
→
研究対象の観察として当然。
---
### 訂正事項③
> 「高橋くんといると楽しそう」
→
研究活動が順調だから。
---
### 訂正事項④
> 「特別」
→
共同研究者として重要な人物であるため。
---
### 訂正事項⑤
> 「好きなんじゃない?」
→
根拠がない。
---
# 【田辺・再回答】
> 「じゃあ、聞いてみれば?」
---
### 【佐倉】
> 「何を?」
### 【田辺】
> 「高橋くんのこと。」
### 【佐倉】
> 「……。」
### 【田辺】
> 「好きかどうか。」
---
### 【佐倉】
> 「研究対象だから聞けない。」
### 【田辺】
> 「なんで?」
### 【佐倉】
> 「客観性がなくなる。」
### 【田辺】
> 「もうなくなってると思うけど。」
---
### 【佐倉】
> 「……。」
---
# 【同日・研究会議】
### 議題
**「研究者自身が研究対象になった場合の客観性について」**
---
### 佐倉
> 「第三者から見ると、
> 私たちの行動は恋愛的に見えるらしい。」
### 高橋
> 「そうだね。」
### 佐倉
> 「でも、実際には交際していない。」
### 高橋
> 「うん。」
### 佐倉
> 「だから、
> 恋愛とは言えない。」
### 高橋
> 「そうかな。」
### 佐倉
> 「何?」
### 高橋
> 「付き合ってるかどうかと、
> 好きかどうかは、
> 別じゃない?」
---
### 【記録】
佐倉、
約6秒沈黙。
---
### 佐倉
> 「……研究上、
> その二つは分けて考える必要がある。」
### 高橋
> 「じゃあ、
> 佐倉は俺のこと好き?」
---
### 【記録】
沈黙。
---
### 佐倉
> 「……質問を変更して。」
### 高橋
> 「なんで?」
### 佐倉
> 「研究方法として不適切。」
### 高橋
> 「じゃあ、
> 俺が答える。」
---
### 佐倉
> 「何を?」
### 高橋
> 「俺は、
> 佐倉のこと好きだと思う。」
---
### 【記録】
沈黙。
---
### 佐倉
> 「……思う?」
### 高橋
> 「うん。」
### 佐倉
> 「曖昧。」
### 高橋
> 「だって、
> 好きっていう感情を、
> 俺もまだ全部説明できないから。」
---
### 佐倉
> 「……。」
---
### 高橋
> 「でも、
> 一緒にいたい。」
---
### 佐倉
> 「それは……。」
### 高橋
> 「うん。」
### 佐倉
> 「研究でも、
> そういう結果は出てる。」
### 高橋
> 「じゃあ、
> それでいいんじゃない?」
---
# 【研究ノート】
高橋くんは、
「好き」という言葉を使った。
---
私は、
それを聞いて、
少し驚いた。
---
嫌ではなかった。
---
むしろ、
少し嬉しかった。
---
### 【訂正】
「少し」ではないかもしれない。
---
# 【17:41】
## 【田辺からのメッセージ】
**田辺**
> 今日、高橋くんと何話してたの?
**佐倉**
> 研究。
**田辺**
> 何の?
**佐倉**
> 恋愛感情について。
**田辺**
> ふーん。
**佐倉**
> 何?
**田辺**
> 別に。
**佐倉**
> その「別に」は何?
**田辺**
> 美緒が自分から「恋愛感情」って言うようになったなって。
---
### 【佐倉】
返信なし。
---
### 【田辺】
> 返信遅い。
---
### 【佐倉】
> 今考えてる。
---
### 【田辺】
> 高橋くんのこと?
---
### 【佐倉】
> ……研究のこと。
---
### 【田辺】
> はいはい。
---
# 【6月27日・観察記録】
### 8:02
佐倉、
教室に入る。
---
### 8:04
高橋、
教室に入る。
---
### 8:04
佐倉、
一度だけ高橋を見る。
---
### 8:05
高橋、
佐倉に気づく。
---
### 8:05
高橋:
> 「おはよう。」
### 佐倉:
> 「おはよう。」
---
### 8:06
佐倉、
少し笑う。
---
### 【田辺・観察者メモ】
> やっぱり、
> ちょっと違う。
---
# 【昼休み】
高橋:
> 「今日、放課後どうする?」
佐倉:
> 「研究。」
高橋:
> 「何を?」
佐倉:
> 「まだ決めてない。」
高橋:
> 「じゃあ、
> 一緒に決めよう。」
佐倉:
> 「うん。」
---
### 【田辺・観察記録】
二人、
特に用事がないにもかかわらず、
放課後の予定を決めている。
---
### 【補足】
以前:
「研究があるから会う」
現在:
「会うために研究を作っている」
ように見える。
---
# 【佐倉美緒・研究ノート】
田辺の証言を確認した。
---
私は、
高橋くんのことを、
以前よりよく見ているらしい。
---
本人には、
その自覚がある。
---
高橋くんが誰と話しているか。
何を食べているか。
疲れているか。
笑っているか。
---
気づけば、
確認している。
---
以前は、
それを「観察」と呼んでいた。
---
今は、
その言葉だけでは、
少し足りない気がする。
---
### 【仮説】
「好きな人を知りたい」という気持ちは、
単純な情報収集ではない。
---
相手のことを知るほど、
もっと知りたくなる。
---
そして、
相手に自分のことも知ってほしくなる。
---
### 【赤字】
> これ、
> かなり恋愛に近いのでは。
---
### 【二重線】
> ただし、
> まだ断定しない。
---
# 【同日・17:26】
### チャットログ
**高橋**
> 今日、
> 一緒に帰れる?
**佐倉**
> うん。
**高橋**
> よかった。
**佐倉**
> 何で?
**高橋**
> 会いたかったから。
---
### 【17:27】
佐倉、
返信欄を開く。
---
入力:
> 私も。
---
削除。
---
入力:
> 研究があるから。
---
削除。
---
入力:
> 私も会いたかった。
---
削除。
---
### 【17:31】
最終送信:
> 研究だから。
---
### 【17:32】
高橋:
> うん。
---
### 【17:33】
高橋:
> でも、
> 俺は会いたかったよ。
---
### 【17:35】
佐倉:
> ……そう。
---
### 【17:36】
高橋:
> 佐倉は?
---
### 【17:40】
返信なし。
---
### 【17:41】
高橋:
> 明日でもいい。
---
### 【17:44】
佐倉:
> 明日、
> ちゃんと答える。
---
# 【佐倉美緒・個人メモ】
明日、
何と答えるのか。
---
まだ、
自分でも分からない。
---
ただ、
一つだけ分かっている。
---
「会いたかった」と言われて、
嫌ではなかった。
---
そして、
私も、
同じ言葉を返したいと思った。
---
### 【最終記録】
研究者として、
これは重要な変化である。
---
なぜなら、
これまで私は、
恋愛の価値を、
時間やお金で測ろうとしていた。
---
今は、
一人の人に会えることそのものが、
価値になり得ると、
少しずつ理解し始めているからだ。
---
### 【田辺・欄外メモ】
> 「少しずつ」じゃなくて、
> かなりだと思う。
---
**資料終了**
---
## 【聞き取り調査記録】
### 調査日
6月26日
### 調査対象
田辺由香
### 聞き取り担当
クラスメイトB
### 調査目的
共同研究開始後における、
佐倉美緒の行動・会話・心理的変化について、
第三者の視点から確認する。
---
# 【質問1】
### 「佐倉さんは、研究を始める前と比べて変わりましたか?」
---
### 田辺
> 「変わった。」
---
### 質問
> 「具体的には?」
---
### 田辺
> 「よく笑うようになった。」
---
### 質問
> 「それは高橋くんといるとき?」
---
### 田辺
> 「特に。」
---
### 質問
> 「他の人といるときは?」
---
### 田辺
> 「普通。」
---
### 質問
> 「高橋くんといるときは?」
---
### 田辺
> 「ちょっと違う。」
---
### 質問
> 「どう違う?」
---
### 田辺
> 「本人は気づいてないと思うけど。」
---
### 【田辺・回答】
> 「楽しそう。」
---
# 【質問2】
### 「佐倉さんは、高橋くんの話をしますか?」
---
### 田辺
> 「する。」
---
### 質問
> 「どのくらい?」
---
### 田辺
> 「前はほとんどしなかった。」
> 「今は毎日一回はする。」
---
### 質問
> 「どんな内容?」
---
### 田辺
> 「今日、高橋くんが何を言ったとか。」
> 「この前、高橋くんがこういう本を読んでたとか。」
> 「高橋くんがこのパン好きだとか。」
---
### 質問
> 「本人はどう言っていますか?」
---
### 田辺
> 「全部、研究って言う。」
---
### 質問
> 「田辺さんはどう思いますか?」
---
### 田辺
> 「便利な言葉だと思う。」
---
# 【質問3】
### 「佐倉さんは、高橋くんのことをよく見ていますか?」
---
### 田辺
> 「見てる。」
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### 質問
> 「どんなとき?」
---
### 田辺
> 「教室に入ってきたとき。」
> 「誰かと話してるとき。」
> 「疲れてそうなとき。」
> 「あと、笑ってるとき。」
---
### 質問
> 「なぜ見ていると思いますか?」
---
### 田辺
> 「本人に聞いて。」
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# 【質問4】
### 「高橋くんが女子と話しているとき、佐倉さんはどうなりますか?」
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### 田辺
> 「普通。」
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### 質問
> 「本当に?」
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### 田辺
> 「普通に見える。」
---
### 質問
> 「でも?」
---
### 田辺
> 「会話が少し静かになる。」
---
### 質問
> 「それは嫉妬では?」
---
### 田辺
> 「私はそういう判断はしない。」
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### 【注記】
田辺は、
「嫉妬」という言葉を使用することについて、
回答を拒否。
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# 【質問5】
### 「最近、佐倉さんが一番楽しそうだったのはいつですか?」
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### 田辺
> 「文化祭。」
---
### 質問
> 「何をしているとき?」
---
### 田辺
> 「高橋くんと一緒に準備してたとき。」
---
### 質問
> 「どんな様子でしたか?」
---
### 田辺
> 「二人で同じ紙を見ながら話してた。」
> 「佐倉が何か言って、高橋くんが笑って。」
> 「それ見て佐倉も笑って。」
> 「ずっと楽しそうだった。」
---
# 【質問6】
### 「佐倉さんは、高橋くんと一緒にいることをどう思っていると思いますか?」
---
### 田辺
> 「好きなんじゃない?」
---
### 質問
> 「恋愛的な意味で?」
---
### 田辺
> 「そこまでは分からない。」
---
### 質問
> 「でも、特別?」
---
### 田辺
> 「それはそうだと思う。」
---
# 【佐倉美緒・反論書面】
本聞き取り調査について、
一部訂正を要求する。
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### 訂正事項①
> 「毎日一回は高橋くんの話をする」
→
正確には、
研究に関する話をしているだけ。
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### 訂正事項②
> 「よく見る」
→
研究対象の観察として当然。
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### 訂正事項③
> 「高橋くんといると楽しそう」
→
研究活動が順調だから。
---
### 訂正事項④
> 「特別」
→
共同研究者として重要な人物であるため。
---
### 訂正事項⑤
> 「好きなんじゃない?」
→
根拠がない。
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# 【田辺・再回答】
> 「じゃあ、聞いてみれば?」
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### 【佐倉】
> 「何を?」
### 【田辺】
> 「高橋くんのこと。」
### 【佐倉】
> 「……。」
### 【田辺】
> 「好きかどうか。」
---
### 【佐倉】
> 「研究対象だから聞けない。」
### 【田辺】
> 「なんで?」
### 【佐倉】
> 「客観性がなくなる。」
### 【田辺】
> 「もうなくなってると思うけど。」
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### 【佐倉】
> 「……。」
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# 【同日・研究会議】
### 議題
**「研究者自身が研究対象になった場合の客観性について」**
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### 佐倉
> 「第三者から見ると、
> 私たちの行動は恋愛的に見えるらしい。」
### 高橋
> 「そうだね。」
### 佐倉
> 「でも、実際には交際していない。」
### 高橋
> 「うん。」
### 佐倉
> 「だから、
> 恋愛とは言えない。」
### 高橋
> 「そうかな。」
### 佐倉
> 「何?」
### 高橋
> 「付き合ってるかどうかと、
> 好きかどうかは、
> 別じゃない?」
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### 【記録】
佐倉、
約6秒沈黙。
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### 佐倉
> 「……研究上、
> その二つは分けて考える必要がある。」
### 高橋
> 「じゃあ、
> 佐倉は俺のこと好き?」
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### 【記録】
沈黙。
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### 佐倉
> 「……質問を変更して。」
### 高橋
> 「なんで?」
### 佐倉
> 「研究方法として不適切。」
### 高橋
> 「じゃあ、
> 俺が答える。」
---
### 佐倉
> 「何を?」
### 高橋
> 「俺は、
> 佐倉のこと好きだと思う。」
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### 【記録】
沈黙。
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### 佐倉
> 「……思う?」
### 高橋
> 「うん。」
### 佐倉
> 「曖昧。」
### 高橋
> 「だって、
> 好きっていう感情を、
> 俺もまだ全部説明できないから。」
---
### 佐倉
> 「……。」
---
### 高橋
> 「でも、
> 一緒にいたい。」
---
### 佐倉
> 「それは……。」
### 高橋
> 「うん。」
### 佐倉
> 「研究でも、
> そういう結果は出てる。」
### 高橋
> 「じゃあ、
> それでいいんじゃない?」
---
# 【研究ノート】
高橋くんは、
「好き」という言葉を使った。
---
私は、
それを聞いて、
少し驚いた。
---
嫌ではなかった。
---
むしろ、
少し嬉しかった。
---
### 【訂正】
「少し」ではないかもしれない。
---
# 【17:41】
## 【田辺からのメッセージ】
**田辺**
> 今日、高橋くんと何話してたの?
**佐倉**
> 研究。
**田辺**
> 何の?
**佐倉**
> 恋愛感情について。
**田辺**
> ふーん。
**佐倉**
> 何?
**田辺**
> 別に。
**佐倉**
> その「別に」は何?
**田辺**
> 美緒が自分から「恋愛感情」って言うようになったなって。
---
### 【佐倉】
返信なし。
---
### 【田辺】
> 返信遅い。
---
### 【佐倉】
> 今考えてる。
---
### 【田辺】
> 高橋くんのこと?
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### 【佐倉】
> ……研究のこと。
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### 【田辺】
> はいはい。
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# 【6月27日・観察記録】
### 8:02
佐倉、
教室に入る。
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### 8:04
高橋、
教室に入る。
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### 8:04
佐倉、
一度だけ高橋を見る。
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### 8:05
高橋、
佐倉に気づく。
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### 8:05
高橋:
> 「おはよう。」
### 佐倉:
> 「おはよう。」
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### 8:06
佐倉、
少し笑う。
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### 【田辺・観察者メモ】
> やっぱり、
> ちょっと違う。
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# 【昼休み】
高橋:
> 「今日、放課後どうする?」
佐倉:
> 「研究。」
高橋:
> 「何を?」
佐倉:
> 「まだ決めてない。」
高橋:
> 「じゃあ、
> 一緒に決めよう。」
佐倉:
> 「うん。」
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### 【田辺・観察記録】
二人、
特に用事がないにもかかわらず、
放課後の予定を決めている。
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### 【補足】
以前:
「研究があるから会う」
現在:
「会うために研究を作っている」
ように見える。
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# 【佐倉美緒・研究ノート】
田辺の証言を確認した。
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私は、
高橋くんのことを、
以前よりよく見ているらしい。
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本人には、
その自覚がある。
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高橋くんが誰と話しているか。
何を食べているか。
疲れているか。
笑っているか。
---
気づけば、
確認している。
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以前は、
それを「観察」と呼んでいた。
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今は、
その言葉だけでは、
少し足りない気がする。
---
### 【仮説】
「好きな人を知りたい」という気持ちは、
単純な情報収集ではない。
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相手のことを知るほど、
もっと知りたくなる。
---
そして、
相手に自分のことも知ってほしくなる。
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### 【赤字】
> これ、
> かなり恋愛に近いのでは。
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### 【二重線】
> ただし、
> まだ断定しない。
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# 【同日・17:26】
### チャットログ
**高橋**
> 今日、
> 一緒に帰れる?
**佐倉**
> うん。
**高橋**
> よかった。
**佐倉**
> 何で?
**高橋**
> 会いたかったから。
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### 【17:27】
佐倉、
返信欄を開く。
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入力:
> 私も。
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削除。
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入力:
> 研究があるから。
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削除。
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入力:
> 私も会いたかった。
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削除。
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### 【17:31】
最終送信:
> 研究だから。
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### 【17:32】
高橋:
> うん。
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### 【17:33】
高橋:
> でも、
> 俺は会いたかったよ。
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### 【17:35】
佐倉:
> ……そう。
---
### 【17:36】
高橋:
> 佐倉は?
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### 【17:40】
返信なし。
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### 【17:41】
高橋:
> 明日でもいい。
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### 【17:44】
佐倉:
> 明日、
> ちゃんと答える。
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# 【佐倉美緒・個人メモ】
明日、
何と答えるのか。
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まだ、
自分でも分からない。
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ただ、
一つだけ分かっている。
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「会いたかった」と言われて、
嫌ではなかった。
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そして、
私も、
同じ言葉を返したいと思った。
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### 【最終記録】
研究者として、
これは重要な変化である。
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なぜなら、
これまで私は、
恋愛の価値を、
時間やお金で測ろうとしていた。
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今は、
一人の人に会えることそのものが、
価値になり得ると、
少しずつ理解し始めているからだ。
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### 【田辺・欄外メモ】
> 「少しずつ」じゃなくて、
> かなりだと思う。
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**資料終了**



