よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 小雨は暗闇の中、妙な音に目を覚ました。

 ——ザ―、ザ―

「……?」

 なにか長い髪を、櫛でとかしているような音だ。
 小雨は、来華が寝ていた場所に座っている影に声をかけた。

「来華?」

 影はピタリと動きを止めた。
 暗くてぼんやりとしか見えないが、長い髪の女のようだ。

「!」

 小雨は来華ではないことに気づき、急に悪寒が走った。

「誰?」

 小雨が震える声でそう問いかけると、その影は大きく真っ赤な口でニヤリとこちらに笑いかけて、バサッと彼女の方へ飛びかかってきたのだ。

「いやぁああ!」

 小雨は絶叫しながら両手を振り回した。
 しかし、その影は飛びつく寸前に青白い人魂に変わり、溶け込むように小雨の中へと消えていった。

「えっ! うそ? やだ!」

 小雨は独りであたふたと、人魂が溶け込んできた腹の辺りを触っていた。
 すると全くそんなことは思っていなかったのに、突然とても悲しくなり、大量の涙がボロボロと溢れてきた。

「っえ?」

 小雨はどうしてよいかわからずに、その場に座り込んだまま涙を流していた。