よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 二人は口を閉ざして、暗がりに目を凝らした。
 床が軋むせいで余計不気味さが増す……。

「うわぁ!」

 かずみはまたもや悲鳴を上げて、影利の後ろに急いで隠れた。

「なっ! 来華?」

 かずみは暗がりから姿を現した彼女を見て、ポカンとした。

「びっくりした! な~んだ。影利とかずみじゃん」

 来華もほっとしたように胸を撫で下ろす。

「ははは、な、なんだ、来華かよ」

 かずみは誤魔化し笑いをしながら、影利の後ろから離れた。

「二人共、なにしてんの?」

 来華は寒そうに、両手を擦り合わせている。

「私は厠だけど、来華こそなんで? ていうか、さっきまで部屋で寝てただろ?」

 かずみがそう言うと、来華は不思議そうに首を傾げる。

「えっ? あたし、今厠に行って来たんだけど……?」

「えっ?」

 かずみはそれを聞いてサッと青ざめた。

「で、影利は?」

「いや、俺はなにか妙な足音がしたもんで気になってな……。俺たちの部屋の前を通ったのか?」

「ううん。だって厠は二人の部屋の、だいぶ手前の廊下にあるでしょ?」

 影利はいつものように口元に手を当てて、眉を寄せた。

「それもそうだな。お前は誰にも会ってないか?」

 かずみは青ざめたまま、首を横に振った。

「いいや、それより小雨がまずいかも……」