よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 ——アイツは、よく泣く奴だったな……。

「光我……また泣いてるのか? 今度はなにがあった?」

 まだ幼かった光我は、また泣きながらとぼとぼと俺のところへ戻って来た。

「……うっ……にぃちゃん……」

 光我はしゃくり上げながら、いつものように俺にしがみついてきた。
 俺はフッと笑ってくしゃっと光我の頭を撫でた。

「もう泣くな。男だろ?」

 光我はそれでもやっぱり泣きやみはせず、俺にしがみついたままだった……。

 

 家も両親も亡くし、寒い夜を牛小屋で過ごしたこともあった……。

 俺たちは藁に潜り込み、二人で寄り添って寒さをしのいだ。

「光我、寒くないか?」

 白い息を吐きながら隣でうずくまる光我に、俺は囁いた。
 光我はさらに俺に身体を寄せると、ニコッと笑って答えた。

「兄ちゃんがいるから、あったかいよ……」——

 

「光我はとても俺に懐いていたんだ。……?」

 影利はやけに静かになっているのに気づき、起き上がって海刃の方を見た。
 海刃は既に、気持ちよさそうな表情を浮かべて眠っている。

「…………」

 影利は自分から聞いてきたくせに眠ってしまった海刃と、独り言になってしまった自分の言葉を不愉快に思いながら、独り顔をしかめた。

 そのとき、廊下で人が歩いているような、軋む音が聞こえてきた。
 影利はなにか奇妙な感じがして、そっと布団から抜け出て立ち上がった。