よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「いって、気をつけろぉ!」
 
「あわっ! すんませ~ん」
 
「オイ! なに余所見してんだよ!」
 
 出店に並ぶイカ焼きに見とれ、通行人の男とぶつかってしまった海刃を、かずみが軽く小突いた。
 
「ハワァ……でも美味しそぉ……」
 
 今度は小雨が大判焼きにうっとりとした。
 
「バカ! 金がないだろーが!」
 
 かずみがまたもしかりつける。
 
「うぅ~。かずみだって食べたいでしょ?」
 
 小雨はおどおどと上目遣いでそう言った。
 
「うっ! まぁ……そりゃあ……」



 
 ここは柳の里。
 柳の里は結構都会な方で、小雨たちは今はとある大きな商店街を歩いていた。
 
「それにしても、アイツの情報を手に入れねぇと始まんねーなぁ」
 
 海刃は見慣れぬ都会にキョロキョロとしながら、つぶやいた。
 
「そーだよ。イカ焼きに見とれてる場合じゃないよ!」
 
 かずみがそう吐き捨てるように言うと、
 
「ね、ねぇ、とりあえずどこかで休憩しようよ! もうずっと歩いてるんだから」
 
 と小雨が気分を変えるように提案した。