よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 光我はよろずに近づくと、彼の手の届かなかった棚からヒョイと書物を抜き取った。

「こんなところも届かねぇのかぁ? ちゃんと向こうに梯子があんだから、自分の背丈考えろよ」

 ニヤニヤとしながらそう言う光我の腹に、よろずは強烈な拳を一撃食らわせる。

「いちいちうるせぇんだよ! 邪魔すんじゃねぇ!」

 光我も負けじとよろずに殴り返す。

「んだと、てめぇ! せっかく背が足りねぇみてぇだから、取ってやったのによ!」

「いって! 誰も頼んでなんかねぇ!」

「なんだとぉお?」

 こうしてまたもや、小さな争いが始まった。
 二人は暴れたせいで棚に激突し、今度はその上に大量の書物が降り注いだ。
 とっさに二人は頭を抱えて縮こまり、目を瞑る。

「「うわぁあ!」」

 二人は書物を押し退けながら立ち上がった。

「てっめ、なにしやがんだよ!」

 光我が頭に乗っかった書物を手に持ったまま、そうわめく。

「い、いや、今のはなんて言うか自業自得——っああ!」

 よろずは光我の持っている書物を指差して叫んだ。

「あ?」

 光我は腹立たしげに書物を睨みつけた。
 その表紙には『よろづ世の歴史』と書かれている。

「貸せ!」

 よろずは勢いよく光我の手からそれをもぎ取って、パラパラと開いた。

「オイ、どうしたんだよ?」

 光我は気づいていなかったようで、よろずの隣に立ってそれを覗き込んだ。

「あったぞ! コレだ!」

 よろずは食い入るように書物を見つめたまま、声を高ぶらせた。

「本当か?」

 光我も目を輝かせる。
 よろずは『よろづ世のはじまり』について書き記してあるところを、声に出して読み始めた。