よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 大入道に夜中に起こされたせいで、二人は昼近くに目を覚ました。

 二人は、運よく無事だった、大量の書物が保管されている大きな蔵を、城の敷地内に見つけ出し、『よろづ世のはじまり』に関して記されているはずの書物を、一日中捜し続けていた。

「だー! こんなところから、見つけ出せるわけねぇだろ!」

 光我はついに癇癪を起こして、書物が保管されている棚を足で強く蹴った。
 その振動で、大量の書物が光我の頭上に降り注ぐ。

「うわぁ!」

 光我は頭を抱えて縮こまった。
 そんな彼を見て、よろずは溜息をついた。

「オイ、あんまり蔵の中を荒らすなよ。余計見つけにくくなるだろうが……」

 光我は舌打ちをして、降ってきた書物を払い除けながら立ち上がる。

「それにしても……この蔵にある書物は、なんだか説教くさいっつーか、なんつーか……そんな内容のもんばっかだな……」

 よろずは疲れた顔で、手に持っていた書物を元の位置に戻しながら、ぼそりとつぶやいた。
 
 ここにある書物には、『アヤカシに憑依された際の人体への影響』、『アヤカシに蝕まれていく心身の過程』、『アヤカシに憑依された場合の危険性』、『アヤカシに取り憑かれた際の祓い方』、等々……そういった内容の物が、所狭しと並べられている。

(夜代に入ってるオレたちに、こんな場所に来させて、桜在さんは、一体なんのつもりだってんだ……)

 よろずは内心、桜在のことを不審に思いながらも、書物を探す手は止めずにいた。
 光我には、そんな彼のつぶやきは耳に入らなかったようで、さもかったるそうに大きな伸びと欠伸をしている。
  
「ぬっ! くそ」

 そんな中、よろずは高いところの棚に手が届かずに、苦戦を強いられた。