よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「おめぇは?」

 光我は蝋燭に視線を戻し、それに答える。

「オレもお前と一緒だ……」

 よろずは彼が話すのを黙って聞いた。

「……オレは独りで生きていけるほど、強くねぇし度胸もねぇ……。でも、独りで死ぬのも……怖い。……オレは、弱虫だ……」

 光我が消え入りそうな声で言ったことが、聞き間違いかと思って、よろずは彼の表情を窺った。
 しかし光我は、苦しみと悲しみを必死に押し殺したような、複雑な表情を浮かべている。
 光我はすぐに顔を引き締めて、言葉を続けた。

「だからオレは、どんなに汚くてみっともなくても、こ(・)ん(・)な(・)力(・)に頼って生きてくしかねぇんだ」

 よろずはしばらく黙っていたが、不意に光我の目を見てこう尋ねた。

「光我、おめぇ兄貴がいるんだな……」

「え?」

 光我は戸惑いと驚きを隠せないような表情を浮かべて、青ざめた。
 よろずはそんな光我を見つめたままだ。

「さっきオレが起こそうとしたとき、お前『兄ちゃん』って呼んでたから……」

 光我は目を泳がせながらうつむくと、ぽつりとこう答えた。

「あぁ……オレには兄貴がいる……」

 よろずは、そんなうつむいて小さくなった光我を見て、思う。

(なんだよ……コイツだって強がってても、まだオレと同じガキじゃねぇか……)

 二人はその後しばらく無言だった。
 よろずは隙間風に揺らぐ蝋燭を、ぼんやりと見つめていた。

(……コイツにも、きっとなにか、わけがあるんだろう……)


 
 沈黙して灯りを囲む二人の気づかないところでは、風の音に混じって、数え切れないアヤカシたちの悲しみの声が、荒れ果てた天無城の中で反響していた……。