よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 大入道は、二人の後を追って城の扉を突き破り、砂嵐の吹く夜の闇の中、ぼんやりと光る月明かりにその巨大な姿を露わにした。

 大入道は、一般的な大人の男の四、五倍ほども背丈がある。

 大入道は豆粒のような二人を見下ろし、向かってきた。
 二人はすかさず刀を振りかざし、その足を斬りつける。

「ぐおぉ!」

 大入道は痛みに呻き声を上げたが、その足はとても固く、それほど深くは斬りつけられなかった。

「くっそ! こんなにでかいと、どうしようもねぇな!」

 よろずはそう叫んで刀を収めると、背の大鎌を手にした。

「でかい上に固すぎるな!」

 光我もそう言いながら、刀を収めて腰から素早く鎖鎌を手にする。
 よろずは初めて光我の鎖鎌をまともに見た。

 光我の武器は海刃の鎖鎌とは違い、鎖の両端に少し大きめの鎌がついている。
 刃も特徴的で、ギザギザの変わった形をしている。

 よろずは眉を潜めた。

(あんな両端に刃がついた鎖を、どう扱うってんだ? 海刃の鎖鎌も、なかなか扱える奴はいねぇのに……)

 そうこうしているうちに、大入道はまた両腕を振り回しながら襲ってくる。
 二人は急いで、城を囲んでいる城壁の屋根の上へと、崩れている所からよじ登った。
 
 光我は大胆にも大入道の腕へ飛び移り、あっという間に肩まで這い上がった。
 大入道が光我を掴もうと手を伸ばした途端、光我は風をも切り裂くように、鎖鎌を驚くほど素早く操って振り回し、大入道のその数え切れない目を、いくつも潰してしまった。

 よろずは光我の鎌が、彼自身を斬りつけるのではないかと、内心ひやひやしながら見ていたが、鎌はまるで光我の身体を避けるように動いている。
 まるで、それは生きているかのように……。

 遠目から一瞬、光我の瞳がギラリと赤く光ったように見え、鎖鎌は大人しく彼の手に納まった。