よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 足音は床が震えるほど大きな音を響かせて、近づいて来る。

 ——ズシーン ズシーン

 部屋の前で足音が止まる。
 襖がめりめりと音を立てて突き破られた。
 はるか頭上で声が響く。

「……客人か。ならば、おもてなしせねば」

 そう言うとその声の主は、ガラガラとなにかを大量に入口へと転がした。
 二人は勢いよく布から飛び出て、それを見た。
 それは、大量の人の頭蓋骨だった。

「やっぱりな」

 光我がポツリとそうつぶやく。
 二人は、部屋を覗いている声の主を見上げた。
 そこには、数え切れないほどの目をつけた、巨大な大入道が、身体を曲げて無理矢理部屋を覗き込んでいたのだ。

「コイツがこの城に住むアヤカシか」

 よろずは素早く大鎌を背負って刀を抜いた。
 光我も自分の武器を腰に巻きつけ、刀を抜く。

「お目覚めのようだな客人。ならば、改めて、おもてなしせねば」

 大入道は雷のような声でそう言うと、その巨大な手を伸ばしてきた。
 二人はその手を避けながら、襖を突き破って、部屋の外へと転がり出た。
 しかし、燭台の灯りが消えてしまい、突然辺りが真っ暗になってしまう。
 よろずは壁に手をついて面喰った。
 
 そのとき、誰かにグンと腕を掴まれ、強く引っ張られた。

「うわっ!」

 おそらく光我だ。
 よろずはつまずきそうになりながら、光我にグイグイと引っ張られて行った。
 彼は暗闇でも、まるで目が見えているかのようだった。
 大入道は、城内のいたるところを破壊しながら追って来る。

「オイ、オイ、オイ! 自分の家は大事にしろよ! そんなに壊されちまったら、寝床がなくなっちまうだろうがよ!」

 光我はそう叫びながら、よろずの腕を掴んだまま走っている。

 光我に引っ張られて行き、よろずは暗闇の中、やっとの思いで城の扉へ辿り着くと、砂嵐の吹き荒れる夜の砂漠へと走り出た。