よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「…………オイ、光我! 起きろよ!」

 よろずはさっきより強く揺さぶり、声を大きめにした。

「……?」

 光我はようやく眠そうに、薄っすらと目を開ける。
 そして目をこすりながら、よろずに気づくとこう言った。

「…………なんだよ、よろず? 厠にでも着いてってほしいのか……?」

「ふざけてねぇでさっさと起きろ! アヤカシが出たかもしんねぇぞ!」

 光我はそれを聞くと、ようやくはっきりと目を開いて起き上がった。

「アヤカシ?」

 よろずは先ほどの骨を、光我の目の前に突き出した。

「見ろ。なにかの骨だ。さっき誰かがこの部屋に来て、オレたちの様子を見た後、そこの入口に置いてったんだ」

「なんだそりゃ? どういうつもりなんだ? そいつは……」

 光我がそうつぶやいたとき、再び廊下から足音が響いてきた。
 さきほどより大きな足音だ。
 二人は素早く布に潜り込み、刀を握る。
 よろずはとっさに灯りを消した。

 足音はまたもや二人のいる部屋の前で止まった。
 スゥッと襖が開かれる。
 二人は息を潜めた。
 しかし先ほどと同じく、中へ入って来る気配はない。
 さっきより少し上の方で声がした。

「……客人か。ならば、おもてなしせねば」

 そしてその声は、またなにかを入口に置き、襖を閉めると去って行った。

 よろずは布から這い出て燭台に火を灯し、声の主が置いていった物を拾い上げた。

「オイ、そりゃなんだ?」

 光我もそろそろと布から抜け出して、よろずの方へと近づく。

「これは……なにか小さい動物の頭蓋骨だ」

「なんで、んなもん置いてくんだ? 奴はなにを考えてんだ? そもそも、アヤカシなのかもはっきりわからねぇな……」

 光我は口元に手を当てて、考え込むように顔をしかめた。
 よろずも困ったような表情を浮かべる。

「そうだな……。それに、さっきよりでかかった……」

 光我はよろずの手からその骨を取ると、さきほどの骨と見比べた。

「さっきよりでかかったって、どういうことだ?」

 光我がそうつぶやいたとき、またもや足音が響いてきた。