よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 真夜中のことであった。

 よろずは不意に、遠くから聞こえる足音に目を覚ました。
 よろずは少し寝ぼけてボーっとしていたが、近づいて来る足音にはっとして、そばに置いていた刀を握りしめた。
 
 ボロ布をすっぽりと被ったまま、暗闇の中、じっと耳を澄ませる。
 足音は二人のいる部屋の前でピタリと止まった。
 よろずはいつでも起き上がれるよう、布の中で体制を整えた。

 襖がスゥッと開く音がする。
 しかし、それが中に入って来る気配はない。
 暗闇の中で声がした。

「……客人か。ならば、おもてなしせねば」

 その声はなにかを部屋の入口に置くと、襖を閉めて歩き去って行った。

 よろずはそっと起き上がり、手探りでマッチを取り出すと、燭台に火を灯した。
 そして、部屋の入口まで灯りを持ったまま、謎の声が置いていった物を確かめに行った。
 入口のそばに置いてある、白くて細い物を手に取って拾い上げる。

(……骨か?)

 それはなにか、小さな動物の骨のようだった。

 よろずは寝床に戻ると、光我を起こそうと、彼の傍らに燭台を置いてしゃがみ込んだ。
 光我はちょうど獣が丸まっているような格好で、しっかりとボロ布にくるまって寝入っている。
 よろずは光我を揺り動かした。

「……光我! 光我!」

 しかし、光我はさらに縮こまって、わけのわからない寝言をつぶやいただけだった。

「ん~……にぃちゃん……オレぁ△×○※$~——」

 こうして寝ているときの光我は、普段からは想像できないほど穏やかで、幼さすら感じられる表情をしている……。