よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 ——そこには——

「お、温泉?」

 よろずは度肝を抜かれて声を上げた。
 石造りの大きな部屋の隅に、こんこんと温泉が湧き出ていたのだ。
 どうやらここは浴場らしい。

「な! すげぇだろ? こんなところでも温泉が湧き出る場所があんだな! それとも、そのためにわざわざここに城を建てたのか? とにかく、ついてんな!」

 光我はニッと嬉しそうに笑う。

「おめぇも、たまにはいいことすんだな……」

 よろずがそうつぶやくのを、光我は聞いてはいなかった。
 こうして、二人は心ゆくまで湯につかったのだった。

 湯から上がって寝床へ戻ると、光我は部屋の中を探り出した。
 よろずは適当に床に転がった。
 
 すると——

 ——バサッ

「わっ!」

 頭上からボロ布が降ってきた。

「オイ、夜の砂漠は冷えんだからよ、ただの布っ切れしか見つかんなかったけど、一応かけとけ」

 よろずは少し驚いて光我に視線を向ける。
 今までの言動から、彼に人を思いやる心があるのは意外だったのだ。

(意外と気が利くところあんだな)

「あぁ、ありがとな……」

 光我は少し照れくさいのか、なんとも複雑な表情を浮かべて、チラリとよろずを見た。
 光我もよろずの隣に、少し離れて横になった。

 こうして、二人は眠りについた。