よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 よろずと光我は、あれから日が暮れるまで歩き詰めで歩いて、ようやく天無城へと辿り着いた。

 辺りは薄暗くなり、相変わらずやもうとしない砂嵐の中で、天無城は長く暗い不気味な影を落としている。

「ここが天無城か……」

 よろずは城を見上げた。
 光我も笠を持ち上げて、城に目を凝らす。

「でけぇな」

 二人は砂嵐から逃れるように、城の中へと大きな扉を用心深く開け、足を踏み入れた。
 扉の軋む音が暗い城内へと響き渡る。
 よろずはマッチを取り出して、持っていた燭台に火を灯した。
 光我は扉をきちんと閉めると大きく伸びをした。
 よろずはポツリとつぶやいた。

「例の書物があるのは蔵だから、城の外か……。さっきは見当たらなかったな」

 光我は欠伸をしながらそれに答える。

「オイ、よろず、今日はもうあんだけ歩き回ったんだ。寝床でも見つけてゆっくり休もう。明日でも遅くはねぇだろ?」

 確かに、よろずも歩き疲れてくたくただったので、それに同意した。

「それもそうだな。こんなときにへたに動き回って、アヤカシに出くわすのは御免だしな……」

 二人は暗い城内で、とりあえず一階で休める部屋を探した。
 ちょうど客間のような畳造りの部屋が見つかったので、二人はそこで身体を休めることにした。
 城内は暗くてよくわからないが、思ったより荒れ果てている様子もなく、まるで今も誰かが使用しているようにも見える。

 しかも嬉しいことに、寝床を探しているとき——

「オイ! よろず! こっち来てみろよ」

 光我の興奮した声に呼ばれ、よろずは彼の元へと駆けつけた。