よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「じゃあな」

 夜助がそう別れを告げた瞬間、目の前に黒い大きな影が広がった。
 それは一瞬のうちに、翼の羽ばたくような音と共に、砂嵐の中へと掻き消されていった。

「なっ!」

 よろずは突然の出来事に、慌てて彼を探して辺りを見回す。
 光我はそんなよろずを見てこう言った。

「夜助は『鴉天狗』なんだ」

「鴉天狗?」

 よろずは目を丸くする。
 光我はフッと軽く笑った。

「なに驚いてんだ? 『夜代』は化け物の集まりだぞ。オレもな……。てめぇもいずれそうなんだろ?」

 よろずは黙って光我の横顔を見つめていた。

 

 黒い影が空を縫うように飛んでいる。

 ヒューヒューと耳元で風の鳴る中、夜助は——鴉天狗は空を翔けていた。
 大きな黒い翼を羽ばたかせ、ヒトの姿から鳥人の姿となった夜助には、黒く鋭い嘴があった。

(よろず、か……)

 夜助は翼でうまく風を切りながら考え込んでいた。

(桜在は奴(・)ら(・)に託したんだな……。頼んだぞ、キサジ……)