よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「くっそ、とんだ時間の無駄になっちまった!」

 光我はイライラと砂地を踏みつける。
 夜助は呆れ顔で言った。

「ちゃんと確認しながら来たのか?」

「う、うるせぇな。てめぇこそ、キサジはどうしたよ? ま(・)た(・)はぐれちまったのか?」

 すると、夜助は憤慨したような顔をした。

「今(・)回(・)は(・)違う! アイツはアイツで用を任されているんだ! それに奴の気まぐれでいつも、アイツが勝手にフラフラと消えてしまうんだ!」

 光我はそんな夜助を見てニヤッと笑う。

「てめぇが余所見してるからだろ? アイツがああだからこそ、てめぇに任されてるんじゃねぇのかよ?」

 夜助はキッと光我に目を向けた後、よろずに向き直った。

「お前がよろずか?」

「ああ」

 夜助は真っ黒な瞳で、なにか考えるようによろずを見つめた。

「俺は夜助だ。桜在からお前のことは聞いた……。まぁ、こ(・)ん(・)な(・)奴(・)と二人で大変だとは思うが、上手くやってくれ」

 夜助がまともそうなのにほっとして、よろずはうなずいた。

「あぁ、なんとか……」

「オイ、どういう意味だ!」
 
 光我が怒鳴るのを完全に無視しながら、夜助は方角を指し示す。

「天無城はここから北西の方だ。大きな建物だから近づけばすぐにわかるぞ。俺はもう行く。ちゃんと伝えたからな」

「あぁ、御苦労だったな」

 よろずはそう言いながら思った。

(なんだ、『夜代』の中にもまともな奴がいるじゃねぇか……)

「……最後にひとつ」

 夜助が再び口を開く。

「天無城へ行くなら気をつけろ。あそこは別名『妖怪城』とも呼ばれているからな……」

 よろずと光我は二人で顔を見合わせた。