よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 ——バサッ


 
 頭上で砂嵐の音と混ざって、翼の羽ばたくような音がし、二人の目の前に、一人の青年がどこからともなく現れたのだ。

「……お前ら、なにをじゃれ合ってるんだ?」

 二人は同時に怒鳴り散らした。

「「どこがだ!」」

 そして、はっとその青年を見つめた。
 光我が驚いて声を上げる。

「夜助(やすけ)じゃねぇか!」

 よろずは夜助と呼ばれた青年を、しげしげと眺めた。

 ツンツンと立っている真っ黒な短髪に、真っ黒な黒目が印象的な切れ長の瞳。
 そして首にはもちろん、紫檀色の襟巻が巻かれ、黒を基調とした山伏のような服装、腰には刀、背には長い薙刀を背負っている。
 彼は高い下駄を履いているようだが、今はだいぶ砂に埋もれてしまっている。
 
 ——なんだか変わった格好だ——よろずはそう思った。
 
 夜助は口を開いた。

「伝言だ。今から二週間後の正午に、ここから東の方角にある黒龍山(こくりゅうざん)のふもとで落ち合うと、桜在と座朗が言っていたぞ」

 それを聞いて、光我は顔をしかめる。

「チッ、アイツらもう終わってんのかよ。オレたちはまだ着いてもねぇってのによ」

 すると、夜助は少しきょとんとしてこう言った。

「なんだ、天無城へ向かってるつもりだったのか? それなら、だいぶ方向が逸れているぞ……?」

「なに~!」

 二人は思わず叫び声を上げる。
 よろずはチラリと光我を見た。