よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 砂嵐の中、よろずと光我は笠を被って歩いていた。

「ったく! これじゃ、前が見えやしねー」

 光我は砂嵐に負けじと声を張り上げ、悪態をつく。

「オイ、本当にこっちであってんのかよ?」

「あってるはずだ! と思うけどな……」

 光我の返事に、よろずはますます不安になった。

(オイ、大丈夫なのかよ……)

 そんなよろずの不安を他所に、光我は再び声を張り上げる。

「オイ、よろず! ちゃんと着いて来いよ! てめぇち(・)っ(・)こ(・)い(・)んだから、オレが見失っちまうだろ!」

 そう言って、よろずの方を振り返ろうとした光我の紫檀色の長い襟巻を、よろずは思いっ切り引っ張った。

「うぐ!」

「てめぇ、締め殺すぞ!」

 そう怒鳴るよろずの襟巻を、光我も負けじと引っ張って怒鳴り返す。

「てめぇ、なにしやがんだ!」

「うっ、野郎!」

 よろずは再び光我の襟巻を、さらに強く引っ張った。

「ぐっ、てめ、チビのくせに!」

 光我もさらに強く引っ張り返す。

「むぐっ! おめぇがデカ過ぎんだよ!」

「うっ! てめぇなんか、男のくせしてちっこい上に、んな可愛らしい面してんじゃねぇか!」

「! あんだとぉお?」

 こうして、二人が醜く幼稚な争いを繰り広げているときだった。