よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 アタシが絶望したそのとき、数匹の狼が分銅のついた鎖によって薙ぎ倒された。
 続いてかずみが、アタシの目の前に狼を大鉈で斬りつけながら現れた。

「かずみ!」

 アタシは驚いて声を上げた。
 狼は全滅しないうちに、そそくさと逃げて行った。
 海刃も茂みからヒョッコリと出てきた。
 かずみはつかつかとアタシに歩み寄ると、一発げんこつを浴びせた。

「痛!」

 アタシは頭を押さえながら、わけがわからずにかずみを見上げた。

「おんまえっ、なにやってんだよ!」

 かずみはアタシに怒鳴り散らした。

「えっ?」

 アタシはきょとんとして、かずみを見つめた。

「なにお前だけで、よろずを連れ戻しに行こうとしてんだ! なに勝手に独りで決めてんだ!」

 海刃がまぁまぁとかずみをなだめた。

「小雨、おれたちは今まで四人でやってきただろ? おれたちだって、アイツを連れ戻しに行くぞ!」

 海刃はそう言ってにこっと笑った。

「そうだ! だから、独りで行くなんて許さねぇぞ! 私たちも行く! よろずを連れ戻す! 私たちだって仲間だろ?」

 かずみにまくし立てられ、アタシははっとしてうつむいた。

「う、うん。ごめんね……」

 海刃とかずみは顔を見合わせて、にっこりと笑った。

「そうだ。わかればいい。じゃ、みんなでよろずを連れ戻しに行くぞ!」

 海刃がそう言って、二人は歩き出した。

「待って!」

 アタシは二人を呼び止めた。

「なんだ?」

 二人は振り返って首を傾げる。
 アタシは涙を必死に堪えながらこう言った。

「ありがとう……」

 二人は優しく微笑んだ。

「あぁ、行くぞ、小雨」

 かずみの声にアタシも歩き出した。


 
 こうして、アタシたち三人の、よろずを連れ戻す旅が始まった——