よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「小雨!」
 
 今度は海刃が、鎖を大ムカデに絡ませて踏ん張ったまま、小雨に合図をした。
 小雨は大ムカデへと素早く突っ込んでいった。
 手甲鉤が彼女の手できらりと光る。
 小雨は暴れる大ムカデをひらりひらりとかわしながら、あっという間にその切れ味の良い刃で、大ムカデの足を次々と切り落とした。
 
「よし! これで終わりだぁ!」
 
 かずみはそう叫びながら、もはや暴れることも諦め始めた大ムカデに飛び乗り、脳天に巨大な鉈を突き立てた。
 大ムカデは少し震えたかと思うと、やがてピクリとも動かなくなった。
 
「ふぅ、終わったか」
 
 海刃は武器をしまいながら息をついた。
 
「それにしても、一番びびってたアンタが、いっつも一番動きがいいんだよなぁ」
 
 かずみが少し悔しそうにそう言うと、小雨は少し照れくさそうに笑った。
 
 海刃は懐から、なにやら模様の入った白い札のような物を取り出すと、大ムカデの亡骸から滴る血を、その白い和紙に滲ませた。
 白い札全体が、白い絵の具に黒を垂らしたように変色し、中心の円の中に、その色が集まったかと思うと、討伐した大ムカデの墨絵がどろりと浮かび上がった。