よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 その日は空が淀んでいた。

 アタシは今日は会えるような気がして、昼下がりに海岸の洞穴へと訪れていた。

 あの日から三日間、よろずはここへ来なくなっていた……。

 アタシは曇り空のせいで、黒々と広がる海を見つめて待っていた。

「……小雨!」

 よろずが崖を登って現れた。

「あっ、よろず!」

 アタシは嬉しくて顔を輝かせた。
 でも気のせいか、よろずは沈んだ顔をしていた。

「さ、最近ここ来なかったね」

 アタシは少し緊張気味に話しかけた。
 よろずはアタシの隣に座った。

「あぁ……ちょっとな」

 よろずはそう答えて、海の彼方を見つめた。

「……なぁ、小雨」

 よろずはおもむろに口を開いた。

「なぁに?」

「お前、今、毎日楽しいか?」

 アタシは急な質問に少し戸惑ったけど、すぐこう答えた。

「うん! よろずと逢ったあの日から、アタシ信じられないくらい毎日が楽しいよ! かずみと海刃とも友達になれたし」

 よろずはそっと微笑んだ。

「そうか……良かった」

 しかし、なんだかその瞳はとても寂しげに見えた。
 よろずは海から目を逸らし、じっとアタシを見つめた。
 アタシはなんとなく恥ずかしくて、目を逸らした。

「小雨、おめぇは強くなった。アイツら(かずみと海刃)と逢ってから……。アイツらも強くなったしな」

 真剣にそう言うよろずの瞳を、アタシは真っ直ぐと見つめ返した。

「よろずも強くなったよ。アタシが強くなれるのは、よろずがいるからだよ?」

(……よろずはいつの間に、こんなに大きくなったんだろう……)

 アタシはよろずの目を見つめたまま、そう思った。

「だから、これからも一緒に強くなろう?」