よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 ある日の昼下がり、今日は退治屋の仕事が入っていなかったので、アタシはいつものように海岸へ来ていた。
 パラパラと雨が降っていたので、アタシは滑らないように崖を洞穴までの少しの距離を登って、雨宿りしながらよろずを待っていた。

 だけどその日、初めてよろずは夕方になっても姿を現すことはなかった……。


 
 次の日、アタシは商店街を歩いていて、よろずの姿を前の方に見つけたので駆け寄った。

「よろず?」

 アタシはヒョイとよろずの顔を覗き込んだ。

「!」

 アタシはよろずの顔が傷だらけなのに驚いて、思わず息を呑んだ。

「あっ、こ、小雨!」

 よろずはアタシを見て少し慌てた。

「どうしたの? その傷?」

「え、あぁ、こけたんだ」

「本当?」

 アタシはどうしてもその傷が、転んでできたようには思えなかった。
 アタシはよろずの横について歩きながら、不安げによろずを見つめた。
 よろずは少し微笑んで答えた。

「あぁ、気にすんな」

 アタシはその笑顔が、作り笑いだとすぐにわかった。

「昨日、なにかあったの? 海にも来なかったし……」

 アタシは探るように尋ねた。
 しかし、よろずは作り笑いのまま表情を変えなかった。

「別に、ただ昨日は忙しくてよ。悪かったな、小雨」

「ううん」

 アタシはそう言いながら、チラリとよろずの顔を盗み見た。

(……よろず……なにか隠してる……)



 
 それから、アタシは、よろずに距離を置かれているような気がしていた。
 退治屋の仕事も、しばらく一緒にできないと言われていたし、かずみと海刃も、よろずの様子がおかしいことに気づいていた。

「アイツ、な~んか昨日から変だよなぁ……」

 甘味処で椅子に座って団子を食べながら、かずみは眉間に皺を寄せた。

「あぁ、なんか、独りで難しい顔して考え込んでるよな」

 海刃も団子を片手につぶやいた。