よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「ん? どうかしたか?」

「いや~、お前背伸びてねぇなぁと思ってよ」

 たちまち、よろずの表情が険しくなった。

「ぁあん? これでも伸びてんだよ! 小雨よりかは随分高いぞ!」

 海刃は相変わらず空気が読めない(いや、わざとかもしれない)ようで、さらりとこう言った。

「そうかぁ? まぁ小雨は一番ちっせぇから。おれから見たら、お前、だいぶおれと差があるように見えるぅ——!」

 海刃の言葉が終わらないうちに、彼のみぞおちに、よろずの強烈な拳の一撃が加わった。
 背丈は海刃の方が上だとしても、相変わらずよろずの方が武力には長けていたし、人間関係という立場からも何故かよろずの方が上だった……。

「またやってんのか! お前ら」

 そのとき、ちょうどアタシとかずみが二人に出くわした。
 
「おぅ、小雨、かずみ!」

 よろずは海刃を放ってアタシたちに歩み寄った。
 よろずはかずみより少し高いくらいの背丈だったけど、アタシとかずみの背にはだいぶ差があったので、アタシから見たらよろずはかなり大きくなったように見えた。

「な、なに話してたの?」

 アタシは腹を押さえる海刃を見ながら、よろずに尋ねた。

「なんでもねぇ」

 よろずはさらりとそれを受け流した。

「うっ、腹が……」

「そんなことより、次の仕事の打ち合わせだ!」

 かずみは海刃を無視して元気にそう言った。

「…………」

 海刃は誰にも相手にされず、独りで苦笑いをしていた。

 アタシたちはこうして、毎日楽しく退治屋の仕事をしていた。
 アタシはただ、こんな毎日が幸せだった。
 でも、それもそう長くは続かなかった……。