よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 その日アタシは、よろずと一人の少年が、刀の稽古でやり合ってるのを座って見物していた。

 アタシの思った通り、いや、それ以上によろずはこの道場の中でもかなり強かった。
 道場に通い出して、それはますます伸びていた。

 この道場は、主に退治屋を育てる場所で、基本は剣術。
 それがある程度できるようになったら、個人それぞれに適応した武器を使わせてもらえるようになる。
 寮生でなくとも、お金がなくて貧しい子であれば、道場に入って力をつけ、寮生と同じく退治屋として働けるようになったら、そのとき稼いだお金で、少しずつお金を納められるようになっている。

 そうこうしているうちに、よろずは早くも相手の少年の木刀を払い除け、自分の木刀を突き付けて勝負をつけていた。
 
「っくそぉ、お前やるなぁ」

 少年は座り込んだままよろずを見上げた。
 よろずは軽く笑って木刀を下ろした。
 少年はよいしょと立ち上がり、よろずを見つめた。

「お前強いよなぁ。可愛い顔してんのによぉ」

 少年の言葉に、アタシは思わずあっと小さく声を上げていた。
 予想通り、よろずは顔を引きつらせ、赤くなりながら怒鳴っていた。

「——っな? てめぇ、ぶった斬るぞ!」

 しかし少年は、きょとんとしてこう言った。

「えっ? 木(・)刀(・)で?」

「…………」

(ぁあぁ、どうしよぉ!)

 アタシは、あの少年が地雷を踏んでしまったのがわかり、そわそわと見守っていた。

「えっ? どうかし——ヒイィイィイ!」

「よろず!」

 少年の悲鳴にアタシは慌てて立ち上がりかけたが、隣に誰かが座ったのに気づいて横を見た。
 そこには一人の少女が腰掛けて、よろずとその少年を眺めていた。