よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 次の日、アタシは早くから海岸へ訪れて、よろずが来るのを隠れて待っていた。

 いつも通りによろずがやって来たのを見つけて、アタシは岩陰からそろそろと出ると、こっそり彼に近づいた。
 
「よろず!」

「うわぁ!」

 よろずは突然後ろからアタシに大声で呼ばれ、驚いて振り返った。

「なっ、なんだ。小雨かよ。びっくりさせ——ん?」

 アタシはよろずの前にずいっと片手を差し出した。
 そこには、今日早くから来て探した巻貝が乗っていた。
 でも、一生懸命探した割には平凡な巻貝だった。

「……これっ、昨日のお礼」

「え?」

 よろずはきょとんとして、下を向いて手を突き出したままのアタシを見つめた。

「一生懸命探したけど、こんなのしか見つかんなくて……」

 そう言うと、アタシはパッと顔を上げて、よろずの目を真っ直ぐ見つめた。
 よろずもはっとして真剣な顔になった。

「よろず、アタシもアタシのしたいようにする。だから……毎日ここに、よろずに会いに来る」

 はっきりとそう言い終えたアタシに、よろずはニッと笑いかけると、突き出していたアタシの手の平から巻貝を受け取った。

「あぁ、それでいい。コレ、ありがとな」

 よろずは真っ赤になったアタシの頭を、軽くポンッと叩いた。
 よろずとアタシは二人で照れくさそうに笑い合った。



 そうしてまた、アタシたちは毎日会うようになった。


 
 よろずはアタシと同じ道場にも通い始め、そこに併設されている寮にも入った。
 
 その寮は、身寄りのない孤児などが、将来退治屋になることを条件に、支援を受けて住まわせてもらえる場所だった。
 退治屋として働けるようになったら、支援してもらった分を少しずつ納めていくんだ。
 
 よろずは空き家に住み着いていたけど、本来は勝手に住んではいけないし、寮の方が設備が整っていて、断然生活はしやすかった。
 それでも、彼は、あの空き家がお気に入りみたいで、たまに寮を抜け出しては、未だに空き家で寝起きすることもあった。
 
 その頃に、かずみと海刃にも出逢った。