よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 次の日、三人は早くから例の化け物が出るという峠を訪れていた。
 そこは周りに木が立ちこめている、薄気味悪い所だった。
 
「どこにいるんだ? 化け物ってのは……」
 
 海刃はそうつぶやきながら、辺りをキョロキョロと見回した。
 小雨は気合を入れるように袖をまくり、そこに隠し持っていた長い獣の爪のような武器——手甲鉤(てっこうかぎ)をギュッと手の甲に装着した。
 
 それとほぼ同時に、木々の折れるけたたましい音が響き渡った。
 
「やっと来たか!」
 
 かずみは、背中の巨大な鉈を手に取りながら構えた。
 木々を押し倒すようにして現れたのは、およそ十メートルはあろうかと思われる、聞いた通りの巨大な大ムカデだった。
 大ムカデは三人に顔を向けると、迷わずその数え切れない足で這って来たのだ。

 かずみは真っ先に大ムカデに突っ込んでいった。
 小雨と海刃も後へ続く。
 かずみは動きの速い大ムカデをひらりと避けると、素早くその背に飛び乗り、巨大な鉈で深く斬りつけた。
 大ムカデは苦しげに巨大な身体をくねらせ、かずみを振り落とそうとする。
 
「海刃!」
 
 振り落とされる前に、かずみは素早く大ムカデから飛び降りると、海刃に合図をした。
 
「わかってる!」
 
 海刃はそう叫ぶと腰の鎖鎌を掴んで、頭上で分銅を振り回し、大ムカデの方へ放って鎖を身体に絡ませた。