よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「待てよ小雨! 待てって——っ小雨!」

 よろずに必死に呼ばれて、アタシは背を向けたまま立ち止まった。

「なんで逃げるんだよ?」

 よろずの視線を感じながら、アタシは彼と目を合わさないように振り返った。

「……っよろずだって……本当は雨なんて嫌いでしょ?」

 アタシは震える声でそう問いかけた。
 少し間があって、よろずは口を開いた。

「……小雨、確かにオレは、本当は雨なんて大っ嫌いだった」

 アタシはギュッと目を閉じてうつむいた。

「独りなのに、雨にまで降られたら、余計それを実感させられるような気がして……大っ嫌いだった」

 よろずはそう言うと一度視線を落とした。
 しかしまた顔を上げ、アタシを真っ直ぐ見た。

「でも、今は違う」

 アタシは思わず顔を上げた。
 よろずと目が合った。

「なんて言うか……上手く言えねぇけど……」

 よろずは少し照れくさそうに額に手を当てた後、真剣な表情でアタシを見つめた。
 アタシはなんだか目が逸らせなかった。