よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 アタシはいつもよりやや早足で森を抜け、海岸へ下りた。
 少し向こうによろずがしゃがみ込んで、砂浜をいじっているのを見つけて、アタシは駆け寄った。

「よろず!」

 アタシの声によろずはパッと顔を上げると、嬉しそうに笑って立ち上がった。

「来たか、小雨! 今日は確かオレの家に行く予定だったな」

「うん!」

 アタシはよろずの声を聞いてほっとし、盗賊のことなんかすっかり忘れてしまっていた。


 
 アタシとよろずは二人並んで、彼の家へと森の中を話しながら歩いていた。

「そういえば、さっき砂浜でなにしてたの?」

「あぁ、貝殻探してたんだ。あの砂浜には綺麗な貝殻がいっぱいあんだよ。たまに貝殻以外のおもしれぇもんも、流れ着いてたりするけどな!」

「へぇ~」

「っあ! そういえばさっき砂浜で……」

 そう言って、よろずが懐をまさぐり出したときだった……。


 
 ——ガサガサ


 
「なんだ?」

 怪しい音に、よろずとアタシはその場で固まった。
 よろずは辺りに目を凝らした。

 ——すると

 茂みを掻き分けて、一人の汚い身なりの男が目の前に現れた。
 アタシはそのとき、やっと盗賊の話を思い出していた。

「なんだ、ガキ二人か」

 男は、アタシたちを見下すような口調で、そうつぶやいた。
 よろずはアタシを庇うように後ろへやると、警戒して刀に手をやった。
 男はゆっくりとアタシたちに近づいてきた。