よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 よろずはしばらくむくれて海を眺めていたけど、やがて表情を和らげて口を開いた。

「なぁ……小雨……」

「なっ、なに?」

 アタシはよろずに嫌われてしまったのではないかと、酷く焦っていたので、びっくりして彼を見た。

「おめぇ、もっと自分に自信持てよ……。おめぇはなんだか、自分に対して否定的過ぎだ」

 よろずは遠い目で海を見つめながら、穏やかにアタシにそう言った。

「えっ……」

 よろずはアタシをじっと見つめた。
 アタシもよろずを見つめ返した。

「……それにおめえは十分、いや、それ以上に、そ、そのっ……かっ……っ」

 よろずは急に頬を赤らめて、アタシから目を逸らし、言葉を切ってしまった。
 アタシは気になってしょうがなく、よろずの顔をおずおずと覗き込んだ。

「な、なぁに?」

 しかし、よろずはますます真っ赤になって、そっぽを向いてしまった。

「な、なんでもねぇ! とにかく自信持てってことだ!」

「ええ~? 教えてよぉ……」

 アタシはがっかりして肩を落としたけど、そう言ってくれたことが嬉しくて、こっそり笑った。

 その後も他愛のない話をし、気がつけばだいぶ日が傾いていた。
 アタシとよろずは、そろそろ帰ろうと海岸に下りた。

「じゃあ、またな」

 よろずはニッと笑ってそう言うと、アタシに背を向けて歩き出した。
 アタシは勇気を出して口を開いた。

「きょ、今日はありがとう。また明日も来るからね……よ、よ(・)ろ(・)ず(・)!」

 よろずははっとして振り返った。
 そして、夕陽と一緒に真っ赤になったアタシに、照れくさそうに微笑んだ。

「あぁ、また明日な、小雨!」

 よろずはそう言うと、海岸を駆けて行った。

 アタシはとてもあったかい気持ちで、よろずを見送った……。