よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「柳の里かぁ……っていうか、背の高い男ってなんだよ?」
 
 海刃はそう言って頭を抱える。
 三人が考え込んでいると、
 
「なぁ、お前らその格好からして、退治屋なのか?」
 
 と不意に宿の主人が声をかけてきた。
 
「あぁ、まぁ」
 
 かずみがそう答えると、
 
「本当か! ちょうど良かった。少し前から、この宿の近くの峠で化け物が出るらしくてな……。人を襲って喰っちまうらしいんだよ。どうやらその化け物ってのが、桁外れにでかいムカデらしいんだが……。退治してくんねーかなぁ? 依頼は出してるんだが、中々引き受けてくれる奴がいなくてさあ。頼むよ! 依頼料は追加で奮発するからよぉ……」
 
 と主人は突然依頼を申し込んできたのだ。
 
「ふーん。でっかいムカデねぇ……。そうかそうか……」
 
 海刃は腕を組んで考える素振りをすると、こう切り出した。
 
「じゃあ、今晩の宿代を飯代を含めて全員タダってのはどうだ?」
 
「よぉし! わかった! ただし頼んだぞ!」
 
 主人はあっさりと承諾する。
 
「ええ! でも、でっかいムカ——」
 
 小雨が情けない声を上げるのを、かずみが素早く遮った。
 
「金のためだ! それに退治屋のくせに情けねーぞぉ?」
 
「えっ……でもアタシ、そのために必要なお金いっぱい持ってきたのに……」
 
 小雨はこの旅のために、必要最低限の物を残して、全て質屋に売り払ってしまったのだ。
 
「アンタばっかに出させるわけにはいかないだろ? バカ。私たちだってよろずを連れ戻したいんだ。仲間だろ? アンタばっか犠牲になるなんて、おかしいんだよ」
 
 かずみは悔しかった。
 
 小雨、よろず、かずみ、海刃の四人は共に退治屋をする仲間として仲が良く、よく四人でつるんでいた。
 退治屋は単独で仕事をする者もいれば、それぞれ団体を編成して仲間と共に仕事をする者たちもいた。
 そして、四人になる以前から、小雨はよろずと特に仲が良かった。
 
 よろずが里を出て行ってしまってから、小雨は誰よりも酷く落ち込んでいた。
 それはもう、見ていられないほどだった……。
 かずみはそのとき、なんと声をかけて良いかわからず、ただ、打ちひしがれる小雨のそばに、いることしかできなかった。
 
 ところが一番傷ついていたはずの小雨が、誰よりも一番先に行動を起こしたのだ。
 そう、かずみが気づいたときにはもう、家の中はからっぽ。
 大事な物もなにもかも売り払い、小雨は独り、よろずの後を追って行ってしまっていたのだ。
 すぐに海刃と二人で小雨の後を追い、なんとか合流することができはしたのだが……。
 
 だから、かずみは悔しかった。
 今までずっと一緒にやってきた仲なのに、小雨は一度もかずみに泣きつかなかった。
 それどころか、独りで行ってしまった……。