よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 次の日、アタシは昨日と同じ、昼下がりののどかな時間にあの海岸へやって来た。

 昨日とは打って変わって、今日は雲ひとつ見当たらないほど澄み切った青空が広がっていた。
 アタシはしばらく、笹でくるんだ二つのヨモギ餅を抱えて海岸をうろうろしていた。
 そしてようやく決心をして、比較的緩やかな崖を、洞穴目指して登り始めた。
 手をつかなくても登れる程度だったが、アタシはまだ慣れてなくて、おぼつかない足取りでとろとろと登っていった。
 ちょうど、洞穴の入口に辿り着いたとき——

「あっ!」

 よろずがひょっこり目の前に顔を覗かせた。

「わぁ!」

 いきなりだったもんだから、アタシはびっくりして、思わず足を滑らせてしまった。

「うっわっ……!」

 ヨモギ餅で手が塞がっていたので、アタシは体勢を崩して、後ろから落ちかけた。

「——っ小雨!」

 間一髪のところで、よろずがアタシの手を掴んで、その細い腕からは想像できないほどの力で、グイッと引き上げてくれた。

「大丈夫か? おめえ、危なっかしい奴だな」

 よろずはそう言いながら、アタシの顔を覗き込んだ。
 アタシはまだ心臓をバクバクいわせながらも、あることにすごく驚いて、感動していたんだ。

「? どうした?」

 無言でその気持ちを噛みしめているアタシを、よろずは不思議そうに見ている。
 アタシは震える口をようやく開いた。