よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「!」

 不意に雨が小降りになった気がして、アタシは泣き腫らした目で空を見上げた。

 しかしそこには空ではなく、穴開きだらけなボロボロの傘と、一人の少年が、大きな瞳でアタシを見下ろしていた。
 少年は目をパチクリとさせた。

「なんだぁ? おめぇ、泣いてんのかぁ?」

「……!」

 アタシはパッと、涙と雨で濡れた顔を背けた。

「…………っ」

 少年がいるにも関わらず、涙は止めようとすればするほど溢れてきた。

「なぁ、こんなところで泣いてると風邪引いちまうぞ? 一体なにがあったんだよ?」

 少年はおずおずと、アタシの顔を覗き込んでくる。
 そう言った少年も、穴開きだらけの傘のせいでびしょ濡れだった。

「っ、うぅ~っ、か、傘穴開いてるよぉ」

 アタシは呻くようにそう言うと、とうとう声を上げて泣き出した。
 
「うっ、うるせぇな! 無いよりはましだろ! なんでそれで泣くんだよ?」

 少年は赤くなりながら狼狽えた。



 アタシは、海が見渡せる崖の下の方にできた小さな洞穴に、その少年に連れられて、二人で雨宿りをしていた。

 アタシはだいぶ落ち着きを取り戻していた。
 そして、膝を抱え込んでうずくまるように座り、少年をチラチラと盗み見ていた。