よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 小雨は薄暗い中、ゆっくりと目を開いた。
 着替えさせられて、布団がかけられている。
 どこかの宿のようだ。
 小雨は古い寝台の上に寝かされていた。
 すぐそばに窓がある。
 まだ夜らしい。
 小雨は布団の中でうずくまったまま、ボーっとしていた。

 すると誰かが部屋に入ってきた。
 小雨は目を閉じてタヌキ寝入りをした。

「……小雨?」

 かずみの声だ。
 しかし、小雨はタヌキ寝入りを突き通した。


 
 ——今は誰とも話したくない……。


 
 かずみは少しすると静かに出て行った。

 小雨は目を閉じたまま思い出にふけった。



 ——アタシとよろずが出逢ったのは十歳の頃だった。
 その日も雨が降っていた。

「……うっ……うっ」

 アタシはその日、海を見渡せる崖の上に独り座って泣いていた。
 アタシはその頃、『雨女』と呼ばれていじめられていた。
 その頃のアタシは、まだ感情が上手く制御できなくて、感情が爆発する度に酷い雨が降った。

 その不思議な力に、アタシも薄々気づいてはいた……。