よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 雨はまだ降り続いている。
 雷もやまない。

 小雨は怒りと悲しみに震えていた。

 彼女自身、もう自分がなにに腹が立ち、なにが悲しいのかわからなくなっていた。

「迂闊だった……。蜘蛛女は日没時にその姿を現す」

 座朗は顔をしかめ、その女から離れながらつぶやいた。
 桜在もその場から遠ざかりながら、刀を抜いた。

 その女からは既に、長い蜘蛛の足が出現していた。
 そしてついには、蜘蛛女の不気味なその姿を露わにしたのだった。

「ったく、こんなときに冗談じゃねぇ!」

 光我は悪態をつきながら、既に刀を抜いて蜘蛛女の方へ走り出していた。
 蜘蛛女は長い足とその巨体で暴れ出した。
 蜘蛛の身体と一体化した女の顔には、狂喜の笑みが浮かんでおり、振り乱した髪が一層不気味に見えた。

 蜘蛛女は光我たちが最初にいた岩山を、すさまじい音と共に崩してしまった。
 辺りに大量の泥水と岩山の残骸が飛び散る。
 みんなは思わず目を瞑った。


 
 我を忘れていた小雨は強く誰かに手を引かれ、はっとして自分を取り戻した。
 小雨は森の中に引き込まれていた。
 向こうではまだ、蜘蛛女が暴れ回っているようだ。
 小雨は自分の手を引いた誰(・)か(・)を急いで振り返った。