よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 一方、小雨たちは雨の中、宿を求めて急いでいた。
 
「あっ、なにか建物が見えてきたよ!」
 
 小雨は前方を指差しながら、二人に声をかけた。
 
「お、助かったあ」
 
 海刃は小雨に続きながら、ほっと胸をなで下ろす。
 三人はすぐにその建物の前に辿り着いた。
 そこは、運良く宿屋のようだった。
 
「雨が酷くなる前に、見つかって良かったよ」
 
 かずみがそう言って戸を開け、三人は宿の中へ入っていった。


 
 三人は宿でも、『よろず』に関しての情報を集めることを忘れなかった。
 金を節約するために質素な食事を食べながら、三人は宿屋の主人に聞き込みをしていた。
 
「うーん……そんな奴、見たような、見てないような……なんせ、宿なんてのは、人の出入りが多いだろ?」
 
 主人は腕を組んでずっと唸っている。
 そんな主人を見かねてかずみは、
 
「そんな、絶対見たら覚えてるはずだよ! あいつ、でっかい鎌背負ってて目立つもん。な、小雨!」
 
 と小雨に相づちを求める。
 
「え! う、うん」
 
 すると、それを聞いていた一人の旅の男が、話に入ってきた。
 
「そいつなら、見たぞ」
 
 途端に三人は男の方へ身を乗り出す。
 
「本当か! どこで見た?」
 
 海刃の質問に男は答える。
 
「うーん、確か三日ほど前に、ここへ来る途中の山の小道ですれ違ったなあ。確かにあの背中のでっかい武器は、目立つからよく覚えてるぞ。二人揃って、赤紫っていうのかなあ? そんな色の長い襟巻して歩いてたぞ。背のかなり高い男も一緒だったしな」
 
「背の高い男……?」
 
 小雨は首を傾げた。
 
「そうそう、ちょっと怖い感じの奴だったな。きっとあの道を行ったなら、柳の里は通るはずだ」
 
 男はそう言い終わると立ち上がった。
 
「なにがあったか理由は聞かねぇが、早くそいつに会えるといいな」
 
「はい。ありがとうございました」
 
 かずみがその男に礼を言って、三人は頭を下げた。
 最後に男はにんまりと笑うと、急いでまだ雨の降る外へ出て行った。