よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「話はそれだけか? さっさと行くぞ、光我」

 よろずは素っ気なくそう言うと、森へ向かって歩き出した。

「待って! 嘘でしょ? そんなの! アタシはよろずがそんなことしてないって、信じるよ! だから、帰ろう?」

 小雨は立つのもやっとな思いで叫んだ。
 すると、よろずは立ち止まって小雨の方を振り返り、冷たくこう言った。

「うるせぇな……殺ったもんは殺ったんだ。オレがどこへ行こうが、おめぇには関係ねぇ。しつこいぞ」

 その様子を見て、光我は面白がって小雨に言った。

「へっ、てめぇも諦めが悪ぃ奴だな。信じる信じないの問題じゃねぇだろ!」

「…………嘘だ」

 小雨はうつむいてつぶやいた。

「なに?」

 光我は僅かに顔をしかめた。

「違う! こんなの嘘に決まってる!」

 小雨は両手で顔を覆うようにして、必死にわめいた。
 光我は刀に手を伸ばした。

「うるせぇ女だなぁ。斬っちまうか?」

 そう言った彼は残忍な笑みを浮かべた。
 すると、今度は桜在が口を開いた。

「やめておけ。憑かれ人ならともかく、そいつに斬る価値はない」

 そして、チラリと座朗の担いでいる女に目をやった。

「チッ」

 光我は舌打ちをしながら手を下ろした。
 よろずは桜在の言葉に僅かに眉を動かした。

「とにかく目障りだ。さっさと失せろ」

 よろずは小雨に見向きもせずにそう言うと、再び歩き出した。

「よろず! 待って! ちゃんと話して!」

 小雨はそれでも諦めない。
 座朗は今まで黙って見ていたが、再び笠に手をやるとこう言った。

「本当に諦めの悪い奴だ。よろずよ、お前がそいつを斬れ。そうすれば、そいつも受け入れざるおえんだろう」

「!」

 よろずは驚いて振り返った。

「おもしれぇじゃねぇか。やれよ、よろず」

 光我は小雨の方をニヤニヤと見ている。