よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 よろずと光我、桜在と座朗はそれぞれ別の目的のために旅立とうとしていた。


 
 ——まさにそのとき、


 
「よろず!」

 叫び声と共に、よろずの前方の茂みから小雨が飛び出してきたのだ。

「!」

 よろずと光我は驚いて立ち止まり、桜在と座朗も同時に振り返った。

「……っ小雨……? なんでここに……」

 よろずは固まったまま、掠れ声でそう言った。

「なんだぁ? コイツ? てめぇの知り合いか?」

 光我は小雨を品定めするように、じろじろと眺め回した。

「…………」

 桜在はよろずと小雨の様子を窺うように、黙ったまま見つめている。

「……別に、ただ一緒に退治屋やってただけだ」

 よろずは冷静さを取り戻し、さらりとそう言った。
 小雨は傷ついたように、茫然とよろずを見つめた。
 しかし、すぐに気を取り直してこう尋ねた。

「ねぇ、どうして急にいなくなっちゃったの? それに……あの小さな村の人たちを殺したのは、よろずじゃないよね? よろずは人を殺したりなんか、してないでしょ?」

 小雨は縋りつくような目をよろずに向けたが、彼は黙ってスッと視線を逸らした。

「……よろず?」

 小雨は震える声でそう呼びかけ、よろずの顔色を窺った。

「はっ! なぁに言ってんだよ! コイツが殺ったに決まってんだろ! コイツはもう自分の手を汚しちまってんだよ! なぁ、よろず?」

 光我は小雨の様子を、さも面白そうに眺めながらそう言うと、よろずにニヤッと笑いかけて相槌を求めた。
 よろずは少し間を置くと、真っ直ぐ小雨の視線を捉えた。
 そして薄っすらと笑みを浮かべると、こう言って退けたのだった。

「あぁ、当りめぇだろ。オレが殺った。それがどうかしたってのかよ?」

 小雨は、その言葉の意味を中々呑み込むことができず、ただボーっと彼を見つめていた。

 冷たい風が吹いた。

 その風で、紫檀色の長い襟巻が揺れた。

 空が淀み始めた……。