よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 小雨とかずみは森の中を闇雲に走り回っていた。

「どこだ? どこにいるんだよ!」

 かずみは声を荒げて、近くにあった木を拳で殴りつけた。

「……っよろず!」

 小雨も必死に辺りを捜し回っている。
 そこに海刃たちが追いついてきた。

「オイ! 落ち着けよ! そんなんじゃ見つかるもんも見つからなくなっちまうぞ!」

 海刃が息を切らしながらそう言うと、

「でも、日が落ちる前に見つけないと、本当に見つからなくなっちゃうよ!」

 と小雨が焦りを抑え切れずに叫んだ。

「ちょっと! 焦る気持ちはわかるけど、相手はあの『夜代』だよ? そのよろずってのと一緒に、背の高い男もいるんだから、無闇やたらに飛び込んだって危ないよ!」

 来華も自分を抑えながら二人をなだめた。
 かずみははっと我に返ったような顔をして、項垂れた。

 そのとき、小雨はなにかを感じ取ったかのように、急にピタリと静かになって、右の木立の方をじっと見つめた。

「そうだよな……、ごめん。こんなときだからこそ、落ち着かなくちゃだよな。それに、今みんながバラバラになりでもしたら——」

 かずみがそう言い終わらぬうちに、突然小雨が駆け出した。

「小雨!」

 かずみの驚いた呼び声は小雨の耳には入らず、彼女は独り、薄暗い木立の方へと振り返りもせずに走って行った。