よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「ところで桜在」

 光我は薄っすらと笑みを浮かべたまま、口を開いた。

「コイツにはもう殺らせたのか?」

 光我の質問に桜在はさらりと答えた。

「あぁ、当たり前だ」

「へぇそうかい……おめぇの手も、もう汚れちまったんだな」

 光我はそう言って、一瞬邪悪な表情を垣間見せた。

「…………」

 よろずは無言で光我から視線を逸らした。

「桜在、俺たちはそいつに仲良く自己紹介をするためだけに、お前たちを待っていたわけじゃない」

 そこで初めて、座朗が口を開いた。
 そして、笠をさらに深く被るようにして右手をそえると、こう切り出した。

「お前にはこれから俺と一緒に、ア(・)イ(・)ツ(・)のところへ行ってもらう。ア(・)イ(・)ツ(・)が呼んでるぞ。それに俺はこの女を、奴に引き渡さなきゃならん」

 桜在は地面に横たわっている女を見ると、少し間を置いてこう尋ねた。

「その女は『憑かれ人』なのか……。次にその女に憑いているアヤカシを憑依させるのは誰だ?」

 座朗は相変わらず笠に手をやったまま答えた。

「この女に憑いているアヤカシの能力にもよるが、おそらく火丸(ひまる)かキサジだろう……。だが奴(キサジ)は気まぐれだから、どこにいるのかわからんからな。また姿を現さぬかもしれん」

「そうか……ならばよろずは当分先だな」

 桜在はそうつぶやくと、よろずに向き直った。

「そういうことだ。よろず、これから少しの間、お前は光我と共に行動してもらう」

「はぁ?」

 よろずと光我は同時に気の抜けた声を上げた。