よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「つ、ついさっきって、どのくらい前だ?」

 海刃が思わず身を乗り出して尋ねると、老婆は少し狼狽えながら答えた。

「ど、どのくらいって、本当についさっきだよ。数分ぐらい前だったと思うが……?」

「本当か!」

 かずみは声を高ぶらせた。

「近いぞ!」

 海刃も拳をグッと力強く握りしめた。

「お婆さん! その人たちは、そこの道を行ったんですか?」

 小雨は珍しく大きな声で、勢い勇んでそう尋ねた。

「あ、あぁ。そうだよ」

 老婆は田んぼの前の細道を見てうなずいた。
 そこは深い森へ続いている。

「ありがとう! お婆さん!」

 小雨の一言でみんなお礼もそこそこに、その道へと大急ぎで駆け出した。

「ちょ、ちょっと待ちなよ! その森には恐ろしいアヤカシが出るって噂があるんだよ! やめときなって!」

 老婆は必死に止めたが、

「ご忠告ありがとうございます! でも、私たちには、やらなきゃならないことがあるんです! だから、行かなくちゃ……」

 とかずみの言葉だけが老婆に返り、みんなはあっという間に暗い森へ引き込まれていった。

「はて……そのや(・)ら(・)な(・)き(・)ゃ(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)こ(・)と(・)っていうのは、命より大切なことなのかねぇ……」

 老婆は不安げにそうつぶやき、みんなを見送った。