よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「あんたがやったの?」

 男はなにも答えなかったけど、見ればわかった。
 腰に長い刀を差してたから、確信があった。

「なんとか言ったらどーなの? ねぇ! なんで、なんで母さんを……」

 あたしが泣き叫びながらそう問いかけるのも無視して、男は立ち去ろうとした。

「待ちなよ! 人殺しぃ!」

 あたしは男に殴りかかったけど、もちろん敵うはずなんかなく、すぐに押さえ込まれた。

「……こうしなければ、仕方なかったのだ」

 男は一言だけそう言うと、激しく抵抗するあたしを縛りつけて、出て行った。
 縄は簡単に解くことができたけど、男を追って外に飛び出したときには、もうアイツの姿はどこにもなかった……。

 家に戻って、さっきのは夢であってほしいと思って、辺りを見回した。
 でも、やっぱりそこには母さんが倒れてて、動くことはなかった……。

 悲しかった。

 悔しかった!

 なにより、あの男が憎かった……。

 その日から、あたしはあの男を殺すことを決めたんだ。
 そうして力をつけて旅に出たとき、影利と出逢ったんだ——


 
「…………」

 小雨はなんと言って良いかわからず、唇を噛みしめていた。

「あはは、ごめんね。暗い話しちゃって」

 来華は軽く苦笑した。

「ううん、でも話してくれて嬉しかったよ。……そんなことがあったなんて……」

 小雨は少し笑顔を作った後、すぐにしゅんとした表情に戻った。