よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 ——あたしの父さんは退治屋だったんだ。
 そんで、あたしがまだ物心つかないうちに、アヤカシに殺られちゃったんだ。
 でも、母さんは女手一つで、あたしを一生懸命育ててくれた。
 父さんがいなくて独りで、どんなに苦しくても、いつもあたしのこと一番に想ってくれてた。
 あたしは母さんさえいてくれれば、それで幸せだった。

 でもあの日、あたしがまだ幼い頃、食料を調達して帰った日……。


 
「母さん! 今日はかなりの収穫が——」

 あたしは手に持った籠いっぱいの食料が嬉しくて、家に飛び込んで帰って来たんだ。
 でも、そこには見ず知らずの、すごく背の高い男が紫檀色の襟巻をして立っていた。

「……あんた誰?」

 あたしはそいつをじろじろ見ながら、早く食料を渡したくて母さんを探したんだ。
 
 でも——
 
「母さん!」

 母さんはアイツの後ろで、血を流して倒れてたんだ。
 あたしは食料なんか投げ出して、すぐ母さんの元へ駆け寄った。
 でも、もちろん、もう息なんかしてなかった。
 
「なんで……嘘でしょ? ねぇ、母さん!」

 あたしは信じられなくて、すごく動揺した。
 でもすぐに、あの男の存在を思い出して、アイツを睨みつけた。