よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「小雨……」
 
 そこには、来華が静かに佇んでいた。
 来華は静かに小雨の方へ歩み寄った。
 
「隣、いい?」
 
「えっ? あっ、ど、どうぞ!」
 
 来華は小雨の隣に腰を下ろす。
 
「…………」
 
 少しの沈黙があった。
 
「あ……の……来華さん?」
 
 小雨はおずおずと彼女に声をかけた。
 来華は今年十四になる小雨たちより、二つ年上なのだ。
 
「あっ、ごめんごめん。それと呼び捨てでいいよ! あのさぁ……さっきは酷いこと言ってごめんね?」
 
 来華は申し訳なさそうに、小雨の顔を覗き込んだ。
 
「ええ? ああいや、別にもう気にしてないよ! アタシこそあんな大声上げたりして、ごめんなさい……」
 
 小雨も急いで謝った。
 
「いや、あんたが謝ることないよ」
 
 来華はつぶやくようにそう言った。
 
「そんなことないよ……」
 
 小雨は優しく微笑んだ。
 
 また少しの沈黙が訪れた。
 冷たい夜風が二人の背中を撫でる。
 小雨はブルッと身体を震わせた。
 来華はおもむろに口を開いた。
 
「……あたしの母さんさぁ……『夜代』のある男に殺されたんだ……」
 
「えっ……?」
 
 小雨は一瞬彼女がなにを言ったのか呑み込めずに、固まってしまった。
 
 来華はゆっくりと語り出した。