よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 静かな夜が訪れた。
 一行は川縁の木立の辺りを野宿場所としていた。
 誰もが無言だった。

 小雨は独り、みんなから離れ、川岸に座り込んで考え事をしていた。
 あれから、だいぶ落ち着きを取り戻していた。
 
(寒いっ、そろそろ夜は冷えるなあ……)
 
 小雨はブルッと身震いした。
 そして両腕で膝を抱え込み、うずくまるようにしてぼんやりと川を見つめた。
 
(……よろず、今どこにいるのかなぁ)
 
 小雨はそっと胸元から、首にかけている小さな白い貝殻を引っ張り出した。
 小雨はその紐を持って、自分の目の前に貝殻を持ち上げると、再びぼんやりとそれを見つめた。

   

 ——「ほら、コレ、やるよ」

 よろずは無造作に、小雨の目の前に手を突き出した。
 そこには小さな白い綺麗な貝殻が一つ、乗っかっていた。
 
「えっ! えっ?」
 
「ほらっ」
 
 よろずは動揺する小雨の手の平に、貝殻をヒョイと乗せた。
 そして得意げに言った。
 
「どうだ? 綺麗だろ? この海岸で拾ったんだ」
 
 小雨は視界がジワリとかすむのを感じた。
 
「……っありが……よろ……っ」
 
 小雨は喉が詰まって、うまくしゃべれなかった。
 
 あのときのよろずはまだ幼くて、相変わらず可愛い顔して、ただ無邪気に笑顔を見せていた——


 
 ——ガサッ

 小雨ははっと我に返り、反射的に貝殻をしまうとサッと振り返った。