よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「いやぁ、夜の内に雨がやんでよかったなぁ!」
 
 海刃は歩きながら、不自然なほど元気に声を張り上げた。
 五人は柳の里を後にし、先へと道を進んでいた。
 
「ほ、本当だね!」
 
 小雨も無理に笑顔を取り繕う。
 三人はあえて、昨日の話について触れなかった。
 
「にしても人気がないなぁ。本当に奴らはこの道を行ったの?」
 
 来華は辺りを見回した。
 
「聞いた話ではこっちのはずだ」
 
 影利は淡々とそう答えた。
 他愛のない話をしながら一行は長い間歩いた末、とある山のふもと近くの森まで辿り着いていた。
 辺りは夕暮れのように薄暗い。
 
「ちょっと待て」
 
 不意に影利が一歩前に進み出て、みんなを制した。
 
「なんだ?」
 
 海刃が首を傾げる。
 
「?」
 
 小雨とかずみも、不思議そうに顔を見合わせた。
 来華だけはなにかを察したように、じっと辺りに目を凝らした。
 影利は刀の柄にそっと手を触れた。
 
 ——ガサ ガサ ガサ
 
 なにかが茂みを掻き分けるような音がする。
 影利以外もはっとして、それぞれの武器に手をやった。
 
 ——ガサッ
 
「なに?」
 
 小雨は茂みから出て来た物に驚いて声を上げた。