よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「……っ」
 
 よろずが懸命に言葉を探して足掻いていると、初めて桜在が表情を少し変化させた。
 しかしその表情は、怒りとも悲しみとも、なんとも取れないものだった。
 だが、よろずはその表情の中に大きな気迫のようなものを感じ、言葉を探して開いていた口を、グッと閉じた。
 空気が一瞬張り詰めたのだ。
 
「……躊躇うのか? ……もう一度言うぞ。情など捨てろ。必要ない。余計なものなのだ。強くなりたいのだろう?」
 
 よろずは、背にある大鎌の柄を握りしめた。
 そしてそれを片手に持つと、杉野の村へゆっくりと歩き始めた。
 
「そうだ……お前の覚悟を示してみろ……」
 
 桜在がそうつぶやいたのと同時に、よろずは大鎌を振りかざして走り出した。
 
 もう迷いはなかった……。


 
「そんな……怪しいとは思ってたけど、そんな危ない奴らの仲間になってるなんて……」
 
 かずみは苦しげにつぶやいた。
 
「でも、よろずはそんなことしないっ!」
 
 小雨は自分に言い聞かせるように、そう言った。
 
「そ、そうだよな。アイツはそんな奴じゃない」
 
 海刃もまた、小雨と同じようにうなずいた。
 しばらくの沈黙が続いた。
 その沈黙を無理に破るように、かずみが口を開いた。
 
「アンタたちは、なんの目的があって奴らを追ってるんだ?」
 
 すると来華がキッと目を開いて、こう答えた。
 
「あたしはある男を殺すため! そんで影利は──」
 
「弟を追っている」
 
 影利が後を引き継いで、自分で答えた。