よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 よろずははっとして光我の方に目を向けた。
 海刃は鎖鎌の分銅を、彼の方へ投げ飛ばしながら怒鳴る。

「だから、余所見してんじゃねぇよ!」

 よろずは素早く自分の刀に海刃の鎖鎌をぐるぐると絡め取り、そのまま刀ごと深く地面に突き立てた。

「なっ!」

 海刃は驚いて、そのまま前のめりにこけてしまう。
 そんな海刃を他所に、よろずは光我の方へと駆け寄った。

「光我! おめぇ、なにしてんだよ?」

 光我は苦しそうによろずの方へ顔を上げた。
 よろずはその獣のような顔に、思わず息を呑んだ。


 
 来華は桜在に激しく斬りかかっていた。

 しかし、何度やっても桜在はそれを刀で受け止めるだけで、彼女に刀を向けようとはしない。
 
 来華は二本の刀で、桜在を激しく斬りつけようとしながら怒鳴った。

「っくそ! この人殺しが!」

 来華は素早く桜在の懐へ刀を振り下ろした。
 が、桜在は片方の刀を自分の刀で受け止め、もう片方の刀を彼女の腕を掴んで止めた。

 彼女の手は震えている。

「よせ……お前は、人を斬ったことがないのだろう……」

 来華は顔を歪ませると勢いよくその手を振り払い、桜在から飛び退いた。

「黙れ! あんたを殺るためなら、人殺しにでもなんでもなってやる!」

 桜在は落ち着いた口調でこう話した。

「お前の母はアヤカシに取り憑かれ、心をかなり蝕まれていたのだ……。このままでは、自分の娘も手にかけかねないと思い、自ら夜代に殺すよう依頼してきたのだ……。そして、お前が自分を捜し回ることのないようにと、あの場所で死ぬことを望んだ……」

 来華はそれでも、なおも首を横に振って声を荒げる。

「っそんな都合のいい話信じない! あんただけは許さない!」

 そして再び勢いよく桜在に斬りかかった。