よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 よろずと海刃もまた、ほぼ互角の戦いを繰り広げていた。
 いや、一見そう見えるだけで、明らかに海刃の方が、ただただよろずに受け流されているだけのようだ。

 海刃は、鎖鎌の分銅を振り回している。

「オイ、いい加減本気出せよ。いつまで刀だけで通すつもりなんだ?」

「戦い方なんて人の勝手だろ」

 淡々と答えるよろずに、海刃は顔をしかめて舌打ちをすると、彼に向かって走り出す。
 そのとき、よろずは光我の異変を目の隅に捉えた。

(——! あれが、アイツの得た力なのか?)

「オイ、余所見してんじゃねぇよ!」

 よろずは海刃の鎖鎌をいとも簡単に薙ぎ払う。

「っくそ!」

 海刃は悔しげに悪態をついた。


 
 光我は必死に、自分の意識を保とうと苦しんでいた。

「——っう——ぅう——くっ——にぃ——ちゃん——っ」

 彼の心は、悲しさと悔しさでいっぱいだった。

(オレは……こんな化け物なんかに、呑み込まれちまうのか……)

 ヒュンヒュンと吹く風は、ついには光我自身までも傷つけ始める。

「っ! うあ! くそっ——」

 光我は薄れゆく意識の中、腰に差していた刀を震える手で引き抜いた。
 しかし、その手すらも、もう、獣のような手に変わり果て、もはや自分の手ではなかった。

 光我は震える両手でなんとか刀を手にすると、真っ直ぐと自分の腹へと刃を向けた。

「兄ちゃん……最後——ぐら——い——強くなってみせるよ——」