よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 それから二日経った夜に、やっと兄ちゃんの熱は下がった。

 兄ちゃんは気持ち良さそうに眠っている……。
 オレはそれを見届けると、静かに寮を出た。

(……ごめんな兄ちゃん。オレさえいなければ、もっと幸せになれるのに……。ごめん……ずっと兄ちゃんのところにいるって言ったのに……。でも、オレさえいなければ、もっと楽になれるから……)

 

 そうしてオレは、二度と兄ちゃんの元へは戻らないと決めた……。

 でも、オレは独りでどうやって生きていけばいいのかわからず、寮と里を出てから何日か経っても、途方に暮れて道端の岩に独り座り込んでいた。

 いっそ死んでしまおうかと思ったけど、そんな勇気どこにもなかった……。

 そんなとき、ア(・)イ(・)ツ(・)に逢ったんだ。

 そしてオレは『夜代』に入り、すぐに『鎌鼬』という妖怪の魂を、自分の身体に憑依させて力を手に入れた。

 オレはもう、どんなに汚れてしまってもいいと思った。
 ここまできたら、どんなに無様な方法でも生き抜いてゆくと……。

 独りで生きていく勇気も、死ぬ勇気もないなら、たとえアヤカシだと判っていても、それに縋りついて生きていくしかないと——